お台場の観覧車の中で、俺は幸せの絶頂にいた。
観覧車。15分もの間こんな密室で二人きりで、何もしないわけにいくか。
地面から10メートルぐらい離れたあたりですでに腰に手を回して、
店長が拒否しなかったからキスをした。
以来延々とキスをし続けている。
舌を絡めて、何度も。
唇を離して互いに目が合うたびに、なんかもうめちゃくちゃ恥ずかしくて
恥ずかしいけどでももう一回…みたいな感じでなんていうかもー超幸せ!!!
店長も俺の髪とか触ってくれるし。
若干息も荒いし。(俺も荒いけど)
目元もなんか赤いし。
あ…やばい。興奮してきた…
こんな所で、あんまりな…と思いつつも
エネルギッシュに店長を抱き上げて
自分の膝の上にまたがらせてしまった。
店長も拒否せず、その体制のまま俺の頭を両手で掴んでキスしてくれる。
そのまままた何度も。腕を互いの体のあちこちに絡めて…
あああ幸せ!!!何だかすごくエロいぞ。
でもマジで、このへんで止めないと…
この中で最後までヤる奴等とかいるのかな?
いそうだよな〜。絶対そういう空間になるもんな。
いつの間にか観覧車は頂上のようだ。
今から最後までヤるとしたら相当迅速な動きをしないと無理だ。
て、いうか、それは無理だ。何しろ男同士だし。
地上についた時に他人に変な情景見せでもしたら…考えるだけで恐ろしい。
だからあんまり興奮しないようにしないと…
って店長が俺の股間を触っている!
店長それはまずいっす!俺にも理性の限界があるっす!!
残る理性を総動員させて俺は店長の手を掴んでひっぺがした。
掴んだ手を顔の横ぐらいまで上げて、店長を見ると、目が合う。
店長はハァハァ言ってて、(俺も言ってるけど)顔も上気してるし、相当興奮してるみたいだ。
「歯止めが効かなくなるから…」
手を掴んだ理由を言ってみると、店長は残念そうに俯いて、俺の肩に頭を預けてきた。
店長もそれには納得なのか、しばらくそのまま息をついて、気を静めようとしているように見える。
っていうか体勢的に分かるんだけど、店長もちょっと勃起している。
ぐっ…正直いますぐ床に押し倒したい!!
でも我慢だ。俺達は常識ある大人だから我慢だ…
ふと俺にしがみついたままの店長が口を開いた。
「…今日帰るのか?」
……
帰るのか?→どこかに泊まらずに帰るのか?→今晩はヤらないのか?→今晩したい。
店長のほうから誘い文句を…!!う、嬉しい〜〜〜!!!
実は明日は早番だから、俺は今夜は家に帰ろうと思っていた。
でもこんな事言われて断れるかっ!?多少寝不足になるが、しょうがない。
「…泊まってもいいですけど」
「じゃあ泊まれば」
「店長の家ですか?」
「俺んちでいいんじゃねえ?明日仕事だし…」
そういうわけで今夜は店長の家に泊まる事になった。
もうすでに終電近いし、結構遅い時間になってしまう。
けどアレのためなら寝不足でも平気だ。頑張ろう。
◆◆◆
終電間際のりんかい線に乗って、山の手線に乗り換えて
店長のマンションのある目白まで帰ってきた。
電車の中で俺も店長もうとうとと寝ていた。
結構眠い。
今の俺を動かしているのは性欲だけだ。
店長の部屋に入ると、店長はすぐにシャワーへ行った。
俺はする事もなく、テレビを見るフリをしながら妄想で頭がいっぱいだった。
だって今日の流れはなんか凄いぞ?
何しろ店長のほうから誘って来てくれたからな。
今日はあんな事も…こんな事も出来るかも…
そのうち店長が出て来た。パンツ一枚だけに髪にタオルを巻いている。
細いな〜この人…。いかん、あんまりジロジロ見たら変に思われる。
どうせ後から舐め回すように見るんだ。(むしろ舐め回すんだ。)
それまではクールにしとかないと…。
「村上も入るだろ?」
「あ、はい。じゃあ借ります…」
交代で今度は俺がシャワーに行くことに。
これが終わればアレだ!幸せは目の前だ。
俺はテキパキシャワーを浴びて出てきた。
部屋に入ると、ベッドで店長が寝ている。
あれ、寝てるのですか?店長…
でも起きますよね…?俺が戻って来たし…
起きない。俺が部屋に入る気配があったのに起きない。
もしかして…爆睡?
店長爆睡しちゃってるんですか!?え、だって俺がいるのに?
ベッドで寝る店長はまるで観音菩薩様のように安らかだ。
口を半開きにしてヨダレまで垂らしている。
起こす人間がまるで悪のように思えてくる。
とても起こす雰囲気じゃない。
えー…。何これ…。だって文脈的に店長のほうから誘ったじゃないですか?
俺わざわざ泊まりに来たわけで。明日仕事なのに。
とりあえず隣に寝てみるか…。それはいいよな?
さすがに隣に寝たら起きるんじゃないか?
俺は店長の隣にもぐり込んでみた。
すると店長の目が開いた。
「店長…」
目が合ったので声をかけてみたら、返事もせず
ズレた布団をかけなおして寝返りを打ってしまった。
寝る気満々じゃないですか!!
何だよこれ〜〜。何だよこれ〜〜…
店長の寝息を聞きながら、俺はムカつき始めた。
だって店長が誘うから来たんじゃないですか!
俺のこのムラムラした気持ちのやり場はどこへ?
しかし俺も疲れていた。次第に襲ってきた眠気が怒りと性欲を静めていく。
ハァ…。寝るか…。なんか寂しいな…
店長アッチ向いてるし…何だよこれ…。
何もせずこのまま寝て…起きて…寝不足のまま仕事行くのか…。凹むぜ…
俺が半分眠りかけていた頃、店長がまた寝返りをうった。
目を開けて見てみたら、目の前に店長の寝顔が。
くそう、やっぱり可愛いな〜…と思いながらつい髪を撫でてみると、
寝ぼけたまま俺の胸に顔を寄せ、両手を俺の腰に回して抱きついてきてくれた。
あああ嬉しい!!
もう何もいらん。