昭和39年。15才の原田は新宿で困っていた。
原田「あかんわ・・・財布どっかで盗られたみたいや。
見つけ出して絶対シメたるで!
けどまいったで・・・どうもこうもならへん。
親父らには黙って新宿来とるけん頼るわけにもあかんし・・・
どないしよ〜〜〜〜・・・・」
原田は頭をかかえてうずくまった。
と、その時、目の前にスタスタ背の高い美少女が歩いていた。
原田「そや!美人局でもやるかい!」
美人局(つつもたせ)とは。
ヤクザの典型的な稼ぎ方である。
まず、美人な女を捕まえる。
その女を1人で歩かせる。
その間ヤクザは20メートルぐらいの距離で女を尾行しつつ監視する。
女が逆ナンパして誰か男を捕まえるか、
ナンパされて男に捕まるかして、
そのまま男と女はラブホテルにでも入る。
そこでヤクザがラブホテルに突入。
「ワシの女に何やっとんじゃぁコラァ!!!ぶち殺したる!!!」とブチ切れて、
最後には「誠意見せたらんかい」と言って、金をふんだくる。
これが美人局である。
さっそく原田は美少女に声をかけた。
原田「おい姉ちゃん。何してんねん♪」
美少女が振り向いた。
白髪、鋭い目、美人は美人だが・・・
よく見たら喉仏がある。
アカギ「・・・・。誰が姉ちゃんだって?」
声も男。原田はまたも頭をかかえてうずくまった。
原田 「男かい!!あぁ・・・何しとんじゃワシ・・・」
アカギ「アンタ、頭大丈夫?」
原田 「すまんかったのぅ・・・。何でもあらへんわ」
原田は立ち去った。
が、何故かアカギが追って来る。
原田 「何やねん。すまん言うたやろ」
アカギ「・・・・・・。
金・・・・・・・・」
原田 「あ?」
アカギ「金貸してくんねぇか・・・。
一銭も持ってねぇんだ。腹減っててよ・・・」
原田 「ワシも同じじゃ!!一円も持ってへんわ!!」
アカギ「そっか。ならいいや」
アカギが去って行った。
原田 「(待てよ・・・)」
原田 「おい!」
今度は原田がアカギを追った。
アカギ「・・・・・・」
原田 「ワレもワシも金があらへん。どや、一緒に作らへんか」
アカギ「カツアゲでもすんの?」
原田 「アホ。もっとゼニになる方法があるんや。
美人局ってしっとるか」
アカギ「知ってるよ。けどソレ、女が要るんじゃねぇの・・・?」
原田 「お前が女役をやるんじゃ」
アカギ「・・・・・。死んでも嫌だ・・・・・・」
ぐ〜〜〜〜〜〜
アカギの腹が豪快に鳴り響いた。
アカギ「・・・・・・・・」
原田 「なぁ。お前もワシも余裕が無い。ここはちょっと協力してくれんか」
アカギはしぶしぶ引き受けることになった。
まずは変装。変装グッズは原田はひと通り持っていた。
長い黒髪のカツラ。メイク。
喉仏を隠すために首に包帯。ブラジャー。ボディコン風の服。
原田 「ええ女や!イケるで!」
アカギ「今すぐ自殺したい気分だぜ・・・」
原田 「ええか。喋んな。声でバレる。失語症ってことにしとけ。
やり方は判るな?とにかく男とラブホテルに入れ。それだけでいい」
美人局が開始された。
アカギは1人歩く。原田は20メートルぐらいの間隔で尾行する。
原田 「ちょ、ちょっと待った!!ワレ!」
アカギ「あ・・・?」
原田 「お前なんちゅー歩き方や。ガニ股で。
もっと女らしゅう歩かんかい」
アカギ「自殺したいぜ・・・クソッタレ・・・」
美人局再開。
アカギはすぐにオッサンにナンパされた。
オッサン「何してんの?綺麗だねぇ」
アカギ 「・・・・・・・」
オッサン「疲れてるみたいだねぇ。お腹すいてる?
ちょっと休ませてあげようか?」
オッサンとアカギはラブホテルに入って行った。
原田「(よっしゃ!突入じゃ!)」
原田は突入した。
ホテルの部屋を蹴り壊した。
原田「ワリャ何しとんじゃワシの女に!!!!!!
・・・・・・・・・・・・・」
部屋の中は凄い状態だった。
オッサンは血まみれ。
原田 「・・・・・・・・・
わ、ワレ何やっとんじゃ・・・・」
アカギ「触って来るからよ。ムカついたから」
原田 「あ・・・当たり前やろ・・・ラブホテルなんやから・・・」
キャーーーーーーー!!!
ラブホテルの従業員が悲鳴を上げた。
原田 「あかん!警察来るわ。
逃げるで!」
原田とアカギはダッシュで逃げた。
アカギ「腹減った・・・。もう嫌だ。やりたくねぇ」
原田 「このクソガキ!!アホが!!何やっとんじゃ!!!
美人局はウン1000万(当時はウン10000万?)の金になるんじゃ!」
アカギ「オレはメシさえ食えれば何でもいいよ」
原田 「やったら続行や。ええか、もうヘマするんじゃないで!」
美人局2回目開始。
すぐにナンパされるアカギ。
が、ラブホテルがなかなか決まらないのか、オッサンとウロウロしている。
尾行がバレないように、アカギ達がこっちを向くたびに
原田は空気に向かって「よう!久しぶりやな!」とか言って
空気や他人に挨拶したりしてごまかしていた。
やっとラブホテルに入るアカギとオッサン。
今度こそは!とラブホテルに突入する原田。
原田「ワリャ何しとんじゃワシの女に!!!!!!
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・」
部屋はさらに悲惨な状況になっていた。
オッサンは全身血まみれで失神している。
腕や足を折られている。
原田 「ワリャ・・・・・・
ワリャ・・・・・・
ワリャ・・・・・・
何しとんじゃ!!!!!!」
アカギ「キスされた。」
原田 「・・・・・・・
ど、どこにや」
アカギ「ほっぺた」
原田 「ほ・・・・・・・
ほっぺたて・・・・おま・・・」
キャーーーーーーー!!!
また従業員が悲鳴を上げたので、原田とアカギは逃げた。
公園で原田とアカギは途方に暮れた。
原田 「もう怒る気力も無いわ・・・・・」
アカギ「腹減った・・・・・」
原田 「じゃかしいわ!ワシかてヘトヘトや!
・・・・・・・怒鳴るのも疲れたわ・・・・・・」
アカギ「食い物くれ」
原田 「殺すぞ!!!」
結局アカギと原田は、残った気力でカツアゲを頑張った。
小銭を手にしたアカギはメシを食って元気そうに去っていった。
原田 「何でワシほどの男がカツアゲなんかせなあかんねん・・・
鬱や・・・・・
とんだ疫病神に出おうてしもた・・・・・・」
end.